コラム

一番残念で忸怩たる思いは、民進党が”排除の論理”でズタズタにされたこと/2人の松下政経塾重鎮は万死に値する

注目の人 直撃インタビュー(日刊ゲンダイ2026年6月26日)掲載
前衆議院議員 江田憲司氏 政界引退表明

2月の衆院選で落選し、5月21日に政界引退を表明した。みんなの党、結いの党、維新の党、民進党と4つの政党の結成を主導したベテランだ。進退について、次の選挙が近づく頃に明らかにするケースがままある中、選挙からまだ3カ月というタイミングで引退を決めた。その心は。過去最悪と言っていいほどに存在感の低下した野党の未来は。率直な考えを聞いた。

早い引退表明に驚きました。

実は投票日の翌日の夜、数十人のコアな支援者の皆さんに集まっていただき、その場で引退を表明しています。決断は投票結果を見ての即断即決でした。ただ、支援者の皆様には当面内密にお願いした。お世話になった方にご意見を拝聴しながら私の考えもお伝えし、立つ鳥跡を濁さずという形で進めたかったからです。私としては3カ月もかかってしまった、という感じです。

投票結果を見て即決したのはなぜ?

私の選挙区の有権者の皆様に特別な思いがあるからです。これまで、どんな逆風の時でも、選挙の常識を覆すようなやり方の私を小選挙区で勝たせ続けていただいた。2002年の初当選以来、企業団体献金は一切受け取らず、業界団体の推薦や労働組合の支援も辞退し、100%ボランティアでやってきました。05年の郵政選挙では無所属で自民・民主・共産を相手に勝ち、神奈川で自民党以外の候補者として唯一の勝利でした。09年の民主党への政権交代の時も、12年の自民党の政権奪還選挙の時も、それぞれ相手候補に5万票以上の差をつけて勝たせていただいた。それが今回、大差で敗れました。有権者の皆様から信任されず、イエローカードではなくレッドカード、「一発退場」を突きつけられたのです。ですから、ほとんど迷いなく引退を決意しました。

この間の政界、特に野党についてどう見ていますか。

自民党の圧勝で、野党が何を言っても国民の皆さんに聞いていただけないような惨憺たる状況だと思います。私は初当選時に「あえて無所属・政界再編!」と掲げ、まさに原点は政界再編を目指した特異な政治家でした。自民党の総理大臣を支えた経験から自民党の裏表を知り、一方で当時の民主党に対しても「自民党はダメだけど民主党もね」という民意があった。その信念のもと、みんなの党、結いの党、維新の党、そして民進党を結成し、失敗や分裂、試行錯誤はありましたが、私なりに有言実行してきたつもりです。そういう意味で今、一番残念で忸怩たる思いなのは、民進党が「排除の論理」でズタズタにされたことです。あれが今の野党分断状況の元凶。そこへ「高市ハリケーン」によって焼け野原にされてしまった。

2017年の衆院選ですね。小池都知事が「希望の党」を立ち上げ、民進党が合流、排除の論理で立憲民主党に分裂しました。

民進党があれば、今の国民民主党もなく連合が股裂きになることもなく、二大政党の一角を占めていたかもしれません。返す返すも、排除の論理にあえて騙されたふりをして乗った前原さん(現・日本維新の会)という党首は、本当に万死に値する。そして、自らを万死に値するとおっしゃっている野田さん(中道改革連合前共同代表)。この2人の松下政経塾の重鎮が、まさに今の野党の惨憺たる状況を作り出した。本当に残念でなりません。

これほど野党の存在感がない政治は戦後初めてかと。

問題は、野党同士がいがみ合って連携しようともせず、ましてや再編して新たな枠組みをつくる努力もしていないことに尽きます。私はこの何年か、一議員として非常に歯がゆい思いで見ていました。石破首相時の衆院選では自民党が過半数割れし、野党が連携すれば政権を取れる状況になった。こういう時は党首同士が何度も膝を突き合わせ、時には食事もしながら話を進めないと物事はまとまりません。私はてっきり当時の立憲民主党の野田代表と国民民主党の玉木代表は何度も会って話しているものだと思っていました。ところが、全くやっていなかった。昨年の暮れに玉木さんと話したところ、驚いたことに、昨夏の参院選後はおろか、その前の衆院選から、野田さんから1本の電話もなかったと言うのです。野党第1党の党首が中小政党に足を運び、水面下で膝詰めで話をしなければ、形式的に過半数を上回っても、野党を糾合しての連立政権など夢のまた夢。そうした努力を全くしてこなかった野田さんの責任は極めて重いと思います。

「是々非々で」は自民党を利するだけ

結局、多党化というのか野党はバラバラです。

今の乱立状況では120%政権交代はありません。再編が必要です。衆院選は政権選択選挙ですから、有権者にとって「この政党は選挙後、与党になるのか野党になるのか」は大きな判断材料。そこをはっきりさせずに「是々非々で」などと言う中小政党のやり方では、自民党を利するだけで、いずれ取り込まれます。私自身、なぜ立憲民主党と一緒になったのかと問われることがあります。しかし私には、第3極をいくつか作ってみて分かったことがある。自民党に対峙できる政権交代可能な政党を作るには、やはり旧民主党の皆さんと一緒にならなければ絶対にできないということです。小選挙区制度のもとでは、中小政党は都会で比例区中心に議席は取れても、地方の小選挙区で自民党や旧民主党に勝つことはできない。地方には、自民党なら農協や建設会社、旧民主党なら公務員組合や教職員組合という最低限の基盤がある。全国政党化するポテンシャルを考えたら、やはり旧民主党と一緒になるしかない。そうした考えのもと、当時の岡田代表と何度も会談を重ね、2016年に民進党を結成したのです。

現在の中道、立憲、公明の3党は? 合流するかどうかで揺れています。

申し訳ないけど、国民の皆さんから一度貼られた「中道」という負のレッテルを剥がすのは至難の業です。もう一度、大局的な見地に立ち、小異を捨てて、中道、立憲、公明、国民民主などが大同団結するようなことになれば、政権交代の芽が出てくるかもしれません。

つまり、もう一度再編しないとダメ?

絶対にそうです。今の小川代表も、誰がやっても厳しい中で、茨の道という言葉では言い表せない、苦難の道を歩んでいるので申し上げにくいですが、今の体制のままでは政権は取れません。そして、政権を取れない野党に存在意義はない。中小政党の生き方としては、維新のようにシングルイシューで議員定数削減や社会保障改革を掲げ、連立政権をテコに政策実現を目指す道もある。国民民主党が与党に行くというなら、それはそれで早く旗幟を鮮明にしてほしい。引き続き自民党と対峙し、政権交代可能な政党を目指すというのであれば、そういう人たちとも連携、再編していかなければ、半永久的に自民党政権が続くことになるでしょう。

消費税ゼロの議論は「toolate」

話は変わりますが、食料品の消費税ゼロを早くから提唱していました。現状をどう見ていますか。

私が最初に提唱したのは一昨年の夏です。私からすれば「too late」。与野党ともに対応が遅すぎる。レジの改修がどうこう言う前に早く決断していれば、とっくに実現できていました。今となっては、食料品消費税ゼロは恒久化すべきでしょう。特別会計を含めて300兆円超の予算があるわけですから、年間5兆円程度の恒久財源は、長く首相官邸勤務をした経験からしても、総理が本気になれば、簡単にみつかります。

引退後のプランは?

今後は自由な立場から、言論・出版活動を通じて発信していきたい。当面、3冊ほど出版する予定です。1冊目は、橋本政権時代に担当した中央省庁再編、特に大蔵省改革の内幕です。どうやって大蔵省が動き、族議員が抵抗したかを記録に残しているので、それを克明に書きたい。誰が総理になっても財務省との向き合い方は普遍的な命題であり、その距離感をどう取るかは政権運営の鍵です。2冊目は「政界再編/第3極の光と影」のような形。3冊目は、大蔵省との攻防をテーマにした小説。そして、時間ができたので弁護士資格を取り、新しい分野にも挑戦しようと思っています。

◎プロフィール
えだ・けんじ 1956年岡山県生まれ。東大法卒後、79年通商産業省(現・経済産業省)入省。橋本龍太郎通産相の秘書官、橋本首相の政務担当首席秘書官として省庁再編や行革に携わる。98年に退官し、2002年、無所属で衆院初当選(神奈川8区)。みんなの党、結いの党、維新の党、民進党を結成。20年に立憲民主党に参画。8期務め、26年2月の衆院選で中道改革連合から出馬し落選。同5月に引退表明。元ハーバード大学国際問題研究所フェロー(教授待遇)。